技術で菌に立ち向かう

キレイな空気を目指して、「カビに強いエアコン」の研究開発に挑む!

湿度が高くなる夏本番を前に悩みの種になる“カビ”。 富士通ゼネラルが生活者に実施した「カビに関する意識調査」では、エアコンはお風呂に次いでカビが気になる場所という結果であった。では、カビはどのようにしてエアコンの中に入り、繁殖するのか? また、富士通ゼネラルのエアコン「ノクリア」はどのような技術でカビに立ち向かっているのか? カビと空気のエキスパートである青木博則氏と、エアコンの開発者である増田雄介氏に話を聞いた。

自身の体質をきっかけに、空気中の成分を徹底分析

始めに、「空気の質」や「カビ」に着目したきっかけを教えてください。

青木:私自身が幼少の頃からアレルギー体質だったため「人に優しいキレイな空気をつくりたい」と考え、学生時代から空気の質に関する専門的な研究を開始しました。富士通ゼネラルに入社した今も、その想いは変わっていません。また、カビは吸引するとアレルギー反応を起こす可能性もあり、健康への影響が無視できません。特に乳幼児などは敏感に反応することもあるので、部屋の空気を清潔に保つ重要性を感じています。

具体的にはどんな研究をされていますか?一例を教えてください。

青木:カビの胞子は10マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)程の大きさのため、空気中では人の目には見えません。そこで、室内の空気を特殊装置内の寒天をつけたシャーレ(浅いガラス皿)に回収してカビが好む環境で数日間培養することで見える化し、製品の機能を評価するという取り組みをしています。

そもそも、カビはどのようして生えるのでしょうか?

青木:実はカビは土の中にたくさん存在しています。そこから空気中へ飛ばされた胞子が窓や玄関などから家の中へ侵入し、環境条件が揃うとカビが発生します。一般的に屋内環境では、1立方メートルの空気中に2~200個ものカビが存在しています。

また、カビは「気温・酸素・ホコリなどの栄養分・高湿度」の4つの条件が揃うと育ちます。特に「湿度」が最も大きな要因で、湿度80%以上が7日間続くとコロニー(黒い点の集合体)として人の目でも見える大きさに成長することがあります。

エアコンで繁殖するカビの一種「クロカビ」。悪臭などの原因となることも。

カビ対策のカギは、「湿度を高いままにしない」こと

自宅に入ったカビは、どのようにエアコンの中に入り繁殖するのでしょうか?

増田:エアコンは天井側から空気を吸い込んで内部で冷やし、吹き出し口から室内に吹き出す仕組みになっています。その際、空気中に浮遊するカビがエアコンに吸い込まれ、内部まで入ってしまいます。

夏場にコップの外側に水滴が付くのを目にしたことがあると思いますが、それはコップ周りの空気が急激に冷やされ、水蒸気が凝縮される「結露」という現象によるものです。エアコンでも同様に空気を冷やすための熱交換器という部品に大量の水滴が付着します。「高湿度」を好むカビにとって、エアコンは家電の中でも特に快適な条件が揃いやすい機器といえますね。

なるべく多くの角度から、カビに立ち向かう工夫を

「ノクリア」がカビ対策に力を入れている理由を教えていただけますか?

増田:カビが生えたエアコン自体が胞子の発生源になり、お部屋全体に広がるからです。そのため、「エアコンをカビにくくする」ということは空調機器メーカーとしての使命だと考えています。

具体的にノクリアにはどのようなカビ対策機能があるのでしょうか?

増田:カビが存在しない室内空間を作ることは非常に難しいので、さまざまな角度から対策を講じています。例えば、内部へ入るカビの量を減らすために電気の力で集めて吸着させる「プラズマ空清(注1)」や、カビの成長を抑えるために室内条件を見張り、内部を加熱する「カビ抑制タイマー(注2)」、“カビは熱いお湯に弱い”という知見を生かし、熱交換器の水分を加熱することでカビ菌を“除菌”する「熱交換器加熱除菌(注3)」などがあります。

課題を発見し、実現・実証するまでの道のり

カビ対策機能を開発するまでのお二人の役割や苦労を教えてください。

増田:前提となる環境条件下でエアコンの機能を最大限に発揮させる方法を考えています。その際、性能や使い勝手などが悪くならないようにすることや、さまざまな部屋の形状で空調性能を発揮できるかを幾度となく検証する必要があるのですが、常に「より良いエアコンを作りたい!」という想いがあるので苦ではないですね(笑)。

青木:アイデアの実現もそうですが、効果実証にも苦労しています。お客様と同じ環境や条件にするために、私の自宅で実験を行うことが多いのですが、新しいアイデアを思いついても、エアコンのオフシーズンで試せないということが多くありますね。

「カビ対策でできることはまだある」 2人が語る今後の展望

富士通ゼネラルのエアコンを今後どのように進化させていきたいと思いますか?

増田:エアコンはとても複雑な内部構造をしており、熱交換器や風を送るファンは危険な形状をしているため、お客様自身で掃除をすることができません。今後はカビが気になった際に、お客様ご自身で対応できるような仕組みを検討していきたいと考えています。

青木:先ほど紹介した「プラズマ空清」という技術は、100年以上前からあるにもかかわらず、エアコンへの応用は当時の業界では斬新なものだったと思います。今後も「そんなことやるの?」と言われるような思い切ったチャレンジで、より快適な空気をつくっていきたいと思っています。

青木 博則

空調機商品技術部 マネージャー
※2024年6月20日時点

学生時代から空気質の研究をしている、空気とカビのエキスパート。

増田 雄介

家庭用空調機開発部 マネージャー
※2024年6月20日時点

部屋の空気を快適にするエアコン本来の役割を追究している、エアコンの機能のエキスパート。

注1: プラズマ空清AS-X404R2において。【試験機関名】(一財)北里環境科学センター【試験条件】25㎥チャンバー(密閉空間)内に[浮遊カビ菌]カビ菌(1種類)を浮遊させ、エアコンを空清運転。経時的にチャンバー内の浮遊カビ菌を捕集し、カビ菌数を測定。【試験結果】[浮遊カビ菌]63分で99%減少(【報告書No.】北生発2018_0224号)

注2: カビ抑制タイマー【試験機関名】(一社)カビ予報研究室【試験内容】当社環境試験室において室温27℃、湿度78%の状態で1日冷房運転9時間を3日間、カビセンサーを設置したエアコンで機能の有り無しにてカビの抑制効果を確認。【報告書No.】220813。

注3: 熱交換器加熱除菌AS-X224Rにおいて。【試験方法】外気27℃、湿度78%の試験室(約6畳)において。加熱除菌運転前と後との比較。10分間で細菌 99%以上、カビ菌 99%以上の減少を確認(細菌1種、カビ菌5種で評価)。【試験機関名】(一財)北里環境科学センター【報告書No.】北生発2018_0225号。熱交換器の一部の菌液を回収し評価。動作環境によって効果が低下する場合があります。また、ニオイや汚れを除去する機能ではありません。