PRESS RELEASE
2022年5月19日
株式会社富士通ゼネラル
22-R01-11
豪雨や騒音下でも聞き取りやすい防災無線放送の新技術を開発
神戸大学との共同研究により災害時の安全確保に貢献
当社は、神戸大学と共同で、防災行政無線の放送内容をより確実に伝達する新技術「Sound Improvement Algorithm For Outdoor Loudspeaker Stations」(以下、SIAFOLS・サイアフォルス)を開発しました。
当社はサステナブル経営の重点テーマの一つである「社会への貢献」の実現に向け、安心して住み続けられるまちづくりなどに取り組んでいます。その一環として、防災行政無線を提供する当社と、音声情報伝達の研究を行う神戸大学との共同研究による「強調アルゴリズム」を応用し、季節や天候状態に合わせ放送音を自動で聞き取りやすく変換する技術(注1)SIAFOLSを開発し、各自治体に提供します。
今後は当社防災行政無線へSIAFOLSの搭載を進め、災害時における地域住民の安全確保にさらに貢献していきます。
【新技術の特長】
豪雨などの環境下で認識しやすい放送を行うため、季節や天候などの変化に合わせ自動で強調アルゴリズムを適用します。これにより、SIAFOLSの効果を検証した実証実験では、従来の放送音に比べ単語了解度(注2)が55%から80%へと大幅に向上しました(注3)。
さらに、自治体庁舎から一律の音質で行われていた従来の放送と異なり、屋外子局やスピーカーごとに音声を制御するため、車の通行など特定の屋外子局周辺で発生している騒音に対しても対応が可能です。
【共同研究の背景】
全国の自治体に整備されている防災行政無線は、災害時に避難情報を放送するなど、地域住民の安全を守る重要な役割を果たしています。
近年、スピーカーの性能向上により明瞭な音声情報伝達が可能となる一方、雨風やその他騒音の影響によっては「音声は聞こえるが、何を言っているのか分からない(放送内容が認識できない)」という課題がありました。これは、季節や天候、周囲の環境により音声の伝搬特性が変化することが原因です。
当社は、このような音声の伝搬特性の変化を測定し、様々な環境下で放送内容を認識しやすくする強調アルゴリズムについて、神戸大学と共同で研究を行い、新技術SIAFOLSを開発しました。
SIAFOLSは、一般的に聞き取りにくい音(k、s、tsなど)に強調アルゴリズムを適用することで、聞き取りやすい音に変換します。実証実験では、スピーカーから「直ちに近くの避難所へ避難してください」という音声を放送し、SIAFOLSをONにした場合は聞き取りづらい部分が最大で10dB程度強調されました(注4)。上の図では、青色の波形が従来に比べ大きいほど、聞き取りづらい音が強調されていることを表しています。
注釈
- 注1 :
- 特許出願中。季節や天候状態に合わせ放送音を自動で聞き取りやすく変換する技術。
- 注2 :
- 単語がどれだけ正確に聴取者に伝わるかを表す値。聴取者が完全に理解できた単語数と、放送した単語数との比をパーセントで表したもの。
- 注3 :
- 本実証実験は日本音響学会による「災害等非常時屋外拡声システム性能確保のためのASJ技術規準」に基づき、実施しました。
- 注4 :
- 基準となる音の約2倍の大きさに感じ、聞きづらかった音が聞きとれるようになります。