「nocria」開発プロジェクト #2 ゴミ集めから始まった開発が、ヒット商品と感動を生み出した。

「ゴミ」のプリンターと「大量のホコリ」を求め、会社中を駆け巡る

ゴミ集積場で、高島は廃棄済みの古いプリンターを引っぱりだした。その給紙機構がフィルターを動かす装置として使えると読んだのだ。

「最初はゴムが滑って全然ダメでしたが、歯車を噛み合わせることでなんとか解決できました」
試行錯誤の結果、既存のエアコンをノコギリで切断してつくった試作第1号機が完成。そして『フィルター自動清掃機能』の開発が正式に決定され、その初代開発担当に高島が指名された。2001年秋のことだった。

「試作機の完成に向けては、性能のテストのために、大量のホコリが必要でした」
当時、高島とともに開発を担当した梅中(現・担当課長)は言う。

「人工のホコリと、日常生活で蓄積されたホコリでは性質が違うんです。本物のホコリは、湿気や油、タバコのヤニ、静電気などを含んでいて、簡単にブラシで掃除できません。そこで、会社中のエアコンや換気扇のフィルターからホコリをかき集め、試作機のフィルターにこすり付けて実験を繰り返しました」

室内機断面図とフィルター自動清掃機構

『フィルター自動清掃機能』の概念図。

フィルターについたホ コリをブラシで上下にはさみ、ダストボックスに集める。たまった ホコリは定期的に捨てる必要があるが操作は簡単だ。

生まれて初めて見る光景、次々に届く感謝の声

さまざまな苦労を経た2003年3月、初代『nocria®』はついにデビューを果たす。世界初のフィルター自動清掃機能が話題となり、当社のエアコン販売台数は、前年を大きく上回った。

当時の状況を、高島が語る。

「お客様の反応が気になって、電気店に立ち寄ってみました。そこで、『nocria®』の本体からフィルターが出てきた時、お客さまが『おおー』と拍手をされたんです。エアコンに向かって人が手を叩く、そんな光景を見たのは生まれて初めてです」

また、エアコン掃除に困っていた高齢者からは、「まさかこんな製品ができるなんて、ありがとうございました」という手紙が届いた。高島は感動し、たまらずにトイレに駆け込んで泣いたという。

「グッドデザイン賞」受賞、販売数も増加したが……

同年10月に、『nocria®』は「グッドデザイン賞」(日本産業デザイン振興会/商品デザイン部門)を受賞。そして、翌2004年には2代目モデルを発売し、販売台数は初代のほぼ2倍に。さらに、翌年発売の3代目は前年度比2.5倍を記録した。

『nocria®』のブランド力は日増しに高まっていったが、営業の阿部はまだ満足していなかった。依然として、関西エリアでは苦戦が続いていたからだ。

「苦戦の最大の原因は、大きさでした。幅が80cmを超える室内機が、日本家屋の標準的な柱の幅に収まらないケースがあったのです」

「小型化」。そこには、単に筐体を小さくして解決することなどできない、二律背反する課題が−−。