「nocria」開発プロジェクト #1 過去に事例がないことは、開発をためらう理由にならない。

前代未聞の商品開発に、魂が揺さぶられた

高島伸成 写真

高島 伸成
Takashima Shinsei
FG研究所
第三グループ担当部長(掲載当時)

エアコンのフィルター掃除ほど、面倒なものはない。「自動でキレイになる機能があれば便利なのに――」。それは、誰もが考えることだ。

各エアコンメーカーでも当然、フィルターの自動清掃機能を研究していたが、技術的にクリアするべきハードルが多く、商品化には至っていなかった。

「そもそも、ホコリをどうやって除去・処分するかなど、前例のないことばかりで、すべてが手探りでした」
初代『nocria®』の開発を務めた高島(現・担当部長)は、当時をそう振り返る。

「しかし、富士通ゼネラルは『前例がないから』と尻込みをする会社ではないんです。私としても、世界で初めてのモノをつくり出すことに、プレッシャーよりも、技術者として魂を揺さぶられる想いでした」

『nocria®』の開発には、もう一つの大きな狙いがあった。

「その頃、当社のエアコンの売れ筋は、低価格の普及機ばかりでした」そう語るのは、関西エリアの営業を統括していた阿部だ。

「営業としては、高級機のラインナップもほしかった。特に関西エリアでの販売で苦戦が続いていて、その突破口になる商品が必要だったのです」

フィルターのホコリを、どう掃除するか?

2001年7月、高島は『フィルター自動清掃機能』の製品化を目指し開発に着手。最初にぶつかった壁は、「フィルターのホコリをどう掃除するか」だった。

「小型の掃除機を内部に搭載するアイデアもありました。しかし、騒音出る上に余計な電力が必要で、省エネ面で問題がありました」

よりシンプルな方法を模索していた高島は、同僚がエチケットブラシでスーツのホコリを拭き取っている姿を偶然目撃。「これだ!」と直感した。

「ブラシを使えば簡単な構造でフィルターのホコリを掃除できる。そう考え、ブラシと一体成形のフィルターを採用。さらに、ブラシではなくフィルター自体を動かすことで、内部スペースの有効活用も実現しました」

次に高島が向かったのは、社内のゴミ集積場だった−−。